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インド政府は、南東部アーンドラ・プラデーシュ州で、3D建設技術を使った177戸の住宅パイロット事業を始めた。政府の発表では、同国で初めて3D建設技術を住宅事業に本格導入する取り組みで、基礎工事の着工にあたる式典が開かれた。あわせて、3D建設住宅の試験事業の開設も伝えられている。総事業費は14億ルピーとされる。狙いは、住宅の供給を早めることと、建設費を抑えることだ。これまで3Dプリント住宅は、モデルハウスや公共施設が単発で建てられる例が多かった。今回は公的住宅の枠組みの中に組み込まれる点に特徴があり、地域の住宅政策の道具として使えるかどうかを試す場になる。

引用元: インドで3D建設技術による177戸の住宅パイロット計画(Press Information Bureau, Government of India)

分析・見解

177戸という規模が、実験と量産の境目にある

3Dプリント住宅は、これまで一軒だけ建てて話題にする例が多かった。インドでも、2023年にベンガルールで完成した郵便局のように、単体の事例が先行してきた。177戸になると話が変わる。同じ設計を繰り返し、機械の段取りや材料の配合、作業員の動きを磨いていく余地が生まれるからだ。

量産では、一戸目より百戸目のほうが安く速くできるはずだ。これを学習効果(=繰り返すほど作業が上達してコストが下がる現象)と呼ぶ。日本の事例は、まだ少数の建物にとどまる。百戸単位で経験を積んだ事業者は、世界でも限られる。今回の事業は、その効果が3D建設でも出るかを確かめる、実地の試験場と見ることができる。

総事業費14億ルピーを戸数で割ると見えるもの

14億ルピーを177戸で割ると、1戸あたり約790万ルピーになる。低所得層向けの住宅としては高く感じる数字だ。ただし、この総額に道路、上下水道、電気などの造成費が含まれている可能性がある。発表だけでは内訳が分からないため、単純に建物の価格とみなすのは危険だ。

本当に見るべきは、同じ地域で従来工法の住宅を建てた場合との差である。壁の施工が速くなっても、屋根、配管、仕上げは人の手が残る。壁だけの節約が全体の何割になるのかが、評価の分かれ目になる。また、完成後の維持費も見逃せない。壁の耐久性が低ければ、初期費用の節約は数年で消える。

人手が豊富な国で、機械化はどこに価値を持つか

インドは人件費が比較的低く、左官や型枠の職人も多い。つまり、人件費の削減だけでは3D建設の説得力は弱い。価値が出るのは、品質のばらつきを減らせる点と、短い工期で大量に供給できる点だろう。雨期の前に壁を立ち上げるなど、気候に合わせた工程管理にも効く。

日本では職人不足が主な動機になるが、インドでは速度と均質さが動機になる。同じ技術でも、導入の理由が国によって違う。この違いを押さえないと、海外事例を日本にそのまま当てはめて読み違える。また、材料のセメントや砂の調達が現地で安定するかも、工期を左右する。

行政が買い手になることで変わる技術の信頼性

公的住宅事業の強みは、需要が確実にあることだ。民間の実験では、買い手探しが先に壁になる。行政が発注者になれば、検査の基準や保証の考え方を、実際の建物を通じて整えやすい。さらに、入居者という実際の使い手が生まれることも大きい。住み心地の声は、どの試験データよりも率直だ。

一方で、公費を使う以上、ひび割れや断熱、耐震などの検証結果は厳しく問われる。成功すれば他州へ広がり、失敗すれば3D建設全体への不信につながる。177戸は、技術の評価を左右する重い試験でもある。

ビジネスへの影響

日本の建設会社が今から確認しておきたい三点

第一に、発注形態を見ることだ。公的住宅の一括発注は、技術提供者にとって大きな機会になる。インドの事業者と組む場合も、材料、機械、設計のどこで価値を出すかを先に決めておきたい。

第二に、コストの見方である。壁だけの単価で比べず、造成から引き渡しまでの総額で比べる。今回の1戸あたり約790万ルピーという数字も、内訳が出るまで結論を急がないほうがよい。

第三に、検証データの公開状況だ。強度、断熱、ひび割れの記録が出れば、日本の設計者にとっても貴重な参考資料になる。

自社の案件に引き寄せて使うための小さな一歩

いきなり3D建設を導入する必要はない。まず、倉庫、塀、擁壁、小屋のような、構造が単純で繰り返しの多い対象で試す方法がある。数十棟の同型建物を扱う事業者なら、型枠の手間が減る効果を測りやすい。

次に、関係する自治体や設計事務所と、確認申請(=建物が法令に合うかを役所に確かめてもらう手続き)の進め方を早めに相談する。日本では、工法ごとの認定や審査に時間がかかる。ここを読み違えると、工期短縮の利点が消えてしまう。

見落としやすいリスクと撤退の目安

リスクの一つは、材料の供給である。専用のモルタル(=セメントと砂を混ぜた材料)は、配合の管理が品質を左右する。調達先が一社に偏ると、価格の変動に弱い。

もう一つは、人材だ。機械を動かす技術者と、設計データを作る担当者が必要になる。小さく始めるなら、外部の専門会社と共同で運用し、三件ほど実績が出た段階で内製化を考えるのが現実的だ。採算が合わない場合の撤退の目安も、あらかじめ決めておくとよい。

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