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日本発の建設3Dプリント技術を展開するV3D Asiaが、マレーシア建設産業開発庁の関連機関であるCIDB IBSと協力覚書を結んだ。内容は三本柱である。一つ目は、3Dプリンターで積み上げた壁が安全かどうかを確かめる計算ソフトを、マレーシアの基準に合わせること。二つ目は、プリンターを動かす人向けの資格認証と教育プログラムをつくること。三つ目は、約100平方メートルのモデル住宅を実際に建てることだ。機械を売って終わりにせず、人材と制度と実物の見本までそろえて市場を開く動きである。現地の技術者育成と並行して、日本の建設技術を海外へ広げる狙いもある。

引用元: V3D Asia、マレーシアで建設3Dプリントの認証制度とモデル住宅を開発(AM Insight Asia)

分析・見解

機械より先に「ものさし」を整える販売戦略

建設3Dプリントの海外展開で、本当に時間がかかるのは機械の輸入ではない。その国の建築基準に合うと誰かが認めることだ。今回の覚書は、まさにこの部分から手を付けている。

壁の安全性を確かめる計算ソフトを現地仕様にするとは、荷重や地震、風、気候といった前提条件をマレーシアの基準へ置き換えることを指す。従来の工法なら、構造設計の流儀は長年の蓄積で共有されている。3Dプリントの壁は層を重ねる構造なので、層の継ぎ目の強度など、既存の計算式では扱いにくい要素が残る。そこを計算ソフトで埋めるわけだ。

資格制度は技術の信頼を担保する保険になる

操作者の資格認証は、地味だが効果が大きい。3Dプリンターの品質は、材料の配合、気温や湿度に応じた吐出の調整、停止の判断といった現場の勘に左右される。同じ機械でも、腕の違いで壁の出来が変わる。

溶接や電気工事に資格があるのと同じ発想で、操作者に公的な認証を与えれば、発注者は安心して頼める。事故が起きたときの責任の線引きもしやすい。技術の信頼を機械ではなく人の側に置く、という設計である。

ここに独自の見方がある。資格制度は教育事業であると同時に、参入障壁にもなる。最初に制度設計へ関わった企業の教材や機材が標準になりやすいからだ。携帯電話の規格競争と同じで、先に基準をつくった側が後の市場を握りやすい。

100平方メートルの実物は、説明資料より強い

モデル住宅の広さは約100平方メートル。日本の一般的な2階建てで言えば、1階の床面積よりやや小さい程度だ。小屋や塀ではなく、人が暮らす住宅の大きさを選んだ点に意味がある。

役所や施主は、図面や動画より実物で判断する。壁の断熱性、窓まわりの納まり、配管の通し方、雨の日の水の流れなど、疑問は実際に建てて初めて答えが出る。見学会を開けば、現地の建設会社や設計者が自分の目で確かめられる。

他国の例では、米国やアラブ首長国連邦の3Dプリント住宅が先行している。ただし多くは現地の事業者が主導した案件だ。日本企業が計算、人材、見本をひとまとめに持ち込む形は、まだ珍しい。

気候と材料の違いが次の試験になる

マレーシアは高温多湿で、スコールも多い。セメント系の材料は、気温と水分で固まる速さが変わる。日本で磨いた配合をそのまま使うと、層が崩れたり、乾燥でひびが入ったりするおそれがある。

現地で調達できる砂や骨材の質も違う。輸入材料に頼ればコストが膨らみ、3Dプリントの利点である低コスト化が薄れる。現地材料で安定した品質を出せるかが、このモデル住宅の最大の見どころだろう。

ビジネスへの影響

海外展開を考える建設会社が学べる三点セット

今回の構図は、技術を海外へ出す際の型として使える。製品、人材、基準の三つを同時に進める方法だ。機械だけを売ると、使い手が育たず、不具合が出たときに評判を落とす。資格制度まで用意すれば、導入後の品質が安定し、保守や教育の継続収入も見込める。

自社に置き換えるなら、輸出したい技術について、現地の基準にどう合わせるか、誰が操作するか、どこで実績を見せるかを先に決めておくとよい。

国内の建設会社や設計者が今から備えること

日本でも、3Dプリントの建築物は構造や防火の審査をどう通すかが課題だ。海外の認証制度の作り方は、国内の議論の参考になる。操作者の技能をどう測るか、計算ソフトの検証をどう公開するかは、そのまま国内の実務に応用できる。

設計者は、層を重ねる壁の特性を理解しておくと強い。協力会社の候補を早めに探し、小規模な試作に参加することが、数年後の受注力につながる。

投資判断で見るべき数字と注意点

意思決定者は、モデル住宅の建設費、工期、材料の現地調達率、資格取得者の人数を追うとよい。この四つが公表されれば、事業の採算が読める。

注意点もある。覚書はあくまで協力の約束で、法的な拘束力や実際の売上を保証しない。認証制度が公式に採用される時期も不明だ。数字が出るまでは、提携や出資の判断を段階的に進めるのが現実的である。

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